2017年 09月 27日
不動川遡行 |
暫くご無沙汰しておりました。サル左衛門です。
沈黙の一か月は学会で松山に行ったり、ふらっと金峰山に行ったり、研究集会があったりそこそこ忙しかったものの、長い空白にはならずわりと登っております。
そろそろシーズンなので岩に行きたいところ。
んで。
昨年夏から何回か機会を伺っていたのですが、その度に天気が悪く、狭いゴルジュという事もあり延期になっていました。
今年の夏は週末のたびに天気が悪く、今シーズンはダメかと諦めていたのですが、9月も末になってようやく週末の天気予報に晴れマークがついたので、思い切っていくことにしました。
詳しい工程は他にしっかり描きたいので、ここでは省いてザックリとした内容で行きたいと思います。
9/22
どうやら明日晴れそうという事になり急いでウェットスーツを買いに大阪へ。昼頃に出発予定が教授との話が長引いてしまい結局出発できたのは3時過ぎ。
急いでウェットスーツを入手し、8時ごろけんじりさんと合流。糸魚川に着いたのは1時過ぎでした。
粟倉の集落の手前のバス停で雑魚寝。
9/23
朝5時起床7時出発で不動滝に8時頃到着。
手前まで行って何とか突破できないか模索するも、見れば見るほど無理そうなので素直に巻くことにする。
手前に戻って右岸のやたら滑る草付きを登っている最中に本格的に雨。おいおい晴れ予報はどうした。
暫し行くかどうするか迷ったものの、雨雲の配置的にそれほど長続きしなさそうだったので行くことにした。
幸い予想は当たり、二の沢の出会いに降りてくる頃には雨は止み増水もそれほどしてなかった。
ここからは全く巻けない深いゴルジュが延々と1km程。礫岩の壁からは大きいもので人ほどもある巨礫飛び出し、異様に屈曲したゴルジュと相まってとてつもない威圧感を醸し出している。
記録の中で「火星にいる様だ」とか「月にいる様だ」とか書かれるのも頷ける。民家から数百mしか離れていないとは到底思えない異質な光景だった。
核心である10mCS滝のA0以外は時短のためにとにかくフリーで突破する。泳げど登れど、落ち口から顔を出せば先には次の淵と滝が待っている。すでに登っている沢屋がいるからいいものの、それでも「いつまで続くのか」という絶望感を抱かざるを得ない。
前人未踏のこの谷に挑んでいった先人や、一人で底の見えない淵を泳ぎ、滝を突破していった大西さんはやはりすごい。後ろでけんじりさんが見守っているからいいものの、自分一人では尻尾を巻いて逃げ出すような沢だった。
登攀力の必要とされる局面では僕が、突破力が必要をされる局面ではけんじりさんが。それぞれ持ち味を最大限発揮し、何とか2時半にアブキの河原に到着。
ここから先に進むか暫し迷った後、今日はここで一泊することにした。大西さんのペースは速すぎる。
アブキの河原から続く帰りの登山道を確認し、テン場を整え、夜は楽しみにしていた焚火。
昔から焚火は大好きだけど、一日頑張った後の焚火とミルクティーは格別だった。
9/24
マットは無かったけれど快適に寝て、昨日同様5時起き、7時過ぎ出発。
上流に向かうに従い沢の水が冷たくなり、体にこたえる。ウェットスーツを買ってきて本当によかった。
この日も最初の4段滝でリングボルトのタイオフを引っ掴んだ以外はすべてフリーorショルダーで突破した。フリーで滝を突破できた時の喜びは格別だ。
4mCSの裏手にあるアンモナイトの化石もしっかりチェック。個人的にはあれはアンモナイトではなく、限りなくアンモナイトっぽく割れた石ではないかと思うけれど、やはり分析してみないとわからないという事で、岩の端っこをサンプリングしてきた。分析結果お楽しみに。
滝裏のアンモナイトに時間を費やすあまり二人ともすっかり体を冷やしてしまい。六ノ沢との出会いで暫し休憩。
その後も順調に進み、12時過ぎに上部ゴルジュの終わりである二股に到着した。
下部ゴルジュほどではないものの、暗闇の泳ぎあり、アンモナイトありの素晴らしいゴルジュだった。
翌日には社会復帰しなければならないので今回の遡行はここまで。暫し休憩した後、アブキの河原まで戻った。
帰りは帰りで歩く→飛び込む→泳ぐの連続。キャニオニングとしても非常に充実した内容だった。
それにしてもこの谷、ギリギリ突破できる滝が連続しているのが非常に素晴らしい。無数にある滝のうち巻かなければならなかったのは最初の2つと下部ゴルジュの最後だけだった。
3時前にアブキの河原に到着し、登山道を下る。とてつもない急斜面についた登山道は荒れ果て、下の方では完全に見失ってしまった。
滑りやすい泥に何度も足を取られドロドロになるころにようやく林道に到着。そこからは快適な歩きで、5時ごろ車まで戻ってくることができた。
周辺の水田は稲刈り中で集落には何とものどかな空気が流れている。ついさっきまであの異形のゴルジュにいたのが信じられないほどだ。
のんびり荷物を片付け、高速を飛ばして帰宅。11時頃帰宅し、翌日は無事社会復帰に成功。
遠征後によくある筋肉痛や眠気も今のところ出ず、理想的な週末の過ごし方となった。
今回の遡行は不動川の源流部に当たる阿弥陀山までは行かず、途中で戻ってくるという内容だったので、実際はもっと充実した内容にできたのかもしれない。
それでも沢登を始めてからまだ日の浅い僕にとって、不動川は完全に実力を上回る課題であり、ゴルジュ帯を突破できただけでも万々歳というのが正直なところだ。
装備不足に始まり、細かな至らなさは挙げればキリがない。
そんな僕が今回不動川を遡行できたのはひとえにけんじりさんのお陰で。。。
お陰様で念願かないました。ありがとうございます。
沢登を始めなければ、そもそも本気で行こうと思わなければ生きてゆく中で絶対に見られない光景、その光景は無理してでも見に行く価値があったと感じる。
その上で僕の理想とする日常生活との両立も保つことができ、この上なく充実した週末となった。
ルシッドの時のような噛み砕けない喜びではなく、久々に爽やかで底の抜けたような喜びを噛みしめることができた。
▲
by sarutheomon
| 2017-09-27 09:38
| 沢
|
Comments(0)