2016年 04月 14日
公開プロジェクトとは何なのか |
さて、今回はずっと前からもやもやしていた事について書こうと思います.
中々書くタイミングや人に話す機会が無かったので渋っていたのですが,少し話題に上がったので研究が忙しくなる前にと思って今回ここに書く次第です.
最初に分かってほしいのはこれから書く内容は僕の個人的な考え方であり、違う意見を完全に否定したいわけではありません.ただ自分の立場考え方を一度明確に示しておく必要があると思ったのです.
「公開プロジェクト」という言葉があります.
つまりは誰しもがトライしていい未完成の課題と言うわけですね.しばしば初登争いがあったりするわけです.
では「公開」が付かない「プロジェクト」.これは一体何なのか?
つまり公開されていないプロジェクトがあるというわけです.
すでに「公開」されている一部のエリアには「非公開プロジェクト」なんてのもあります.
つまり,開拓した人,メインでトライしている人が、それ以外の人がトライするのを禁止しているという状態です.
他人のトライを禁止する理由として主に考えられるのは課題の整備不足でしょうか.
特にリードのルートなどでは支点の整備が不十分であったり浮石が多かったりして,公開されていないなんてケースは多々あると思います.
そこで事故が起こればエリア閉鎖,なんて事にもなりかねないですし.
ではボルダーではどうか.
ルートのケースに比べこれらの理由は圧倒的に少なくなるでしょう.一つの課題にたいして整備にかかる時間は圧倒的に少ないはずですし,エリアが公開されている時点で整備は一通り終わっているというのが後からエリアに来るクライマーの一般的な認識だと思います.(その認識事態にも問題は多少ありますが・・・)
ではなぜトライを禁止するのか,「他人に初登を取られたくないから」というのがむしろ一般的な理由じゃないでしょうか?
精神的な話をしましょう.確かに自分が頑張って掃除して,エリアを整備し,トライを重ねてきた課題を後から来たクライマーに登られてしまったら確かに悔しいです.自分が初登したいと願う事は当然だと思います.
これは一つの課題に限らエリア全体にも言える事です.宮崎の比叡などは開拓メンバー以外がプロジェクトないし掃除されていない課題を触る事をエリア全体で禁止しています.
理由は「部外者に初登されたくない」からだそうです.これは開拓されている方から直接聞きました.
数年前DKさんは比叡の大谷エリアで一本の課題を初登しました.
その時僕も一緒にトライしていましたが,DKさんはグランドアップで,ブラシ片手に脆いフレークを剥ぎながらそのハイボールを登りました.
翌日僕とDKさんは開拓者の方にこっぴどく叱られました.残念ながら不注意だった僕らは岩場の使用ルールに「トポに無い課題をトライしてはいけない」と明記されていた事に気付いていませんでした.
危険を冒した事やトライしていた課題を取った(今回はそういうケースではありませんでしたが)こともそうですがそもそもルールを守れなかったのはまずかったと思っています.
その時は注意を受けただけでしたが,その後「出禁になった」などという噂まで出ていたので,まぁそういう事なのかも知れません.
ローカルへの配慮も欠けていたと思います.これは大いに反省するところです.
ただ,批判覚悟で言いますが,僕は正直その考え方には納得していません.
一体何の権限で岩場を私物化しているのかと,正直なところ思っています.
あの一件以来行く岩場のルールには従っていますし,トライしていい課題なのかも逐一確認をとっています.
しかしそれは無駄に波風立てたくないからであって僕自身がその考えに同意し従っているわけではありません.
岩場の存続にかかわる理由じゃない限り、権限なんて無いじゃないですか.
そりゃ強いクライマーに横取りされたら悔しいし腹が立ちます.でもクライミングってそういうものだと思いますよ.
素晴らしいライン,難しいラインを登れるようになりたいから僕らは頑張ってトレーニングして強くなってきたんですから.中にはそのために生き方まで変えた人もいると思います.
スタートラインはみんな同じで,頑張り次第で差が付いてゆくというのは根本的にフェアな事だと思っています.
ましてや,わざわざ公開した岩場でそれを禁止する方がむしろフェアじゃないと思うんです.
これは特に「非公開プロジェクト」に対する考え方ですが,動機が同じ「他人に登られたくない」であるならばエリア全体のルールにも言える事だと思っています.
だってそんなの努力関係なく「ルールきめたもん勝ち」じゃないですか.そんな事するくらいならエリアを公開しなければいいと思うんです.
他人の課題を登らないというのはいわゆる暗黙の了解であってマナーの一種だと思っています.
僕らはルールを破ったのだしマナー違反をした訳なので,悪いのは全面的に僕らだと思っています.
自分のやったことにを正当化する目的でこの文章を書いた訳ではないということは解って頂きたいところです.
しかしマナーは盲信するものではなく,実行すべき全ての人がその意図を理解している必要があるとおもうのです.
流石に僕も、人が頑張ってトライしている課題を横取りしてやろうとは思いませんし、もしやるのであればちゃんと了解はとるつもりです.
しかし,これはただの気遣いであって,開拓者サイドが全体に対して強制するものではないと考えています.
僕は遠山川を公開するのは正直気が進みませんでした.
自分たちが頑張って開拓してきたこの岩場を,世間に出すというのがどういう事なのかわからなかったのです.
父は地元の方々の元へ何度も挨拶に行っていましたし,僕も当時の自分としてはかなり頑張ってトポをまとめました.
そうして公開してみたらチョーク跡は凄いわ最終的に最大のプロジェクトは小山田さんに登られてしまうわで,傍から見れば散々かもしれません.
それでも大ザルやWADEと話し合ってエリアを公開することにしました.
それは世のため人のためではなく,純粋に遠山川へ来て登ってほしいという僕らの希望でした.
開拓者というのは基本的に弱い立場だとおもいます.
頑張りのわりに見返りと呼べるものはとても少なく.最終的には自分のエリアを「荒らされる」ような結果になりかねないのですから.最近は多くのエリアにおいてチッピングなどの問題も報告されていてより一層その傾向が顕著になっているでしょう.
ただし,開拓において「見返り」や「権限」をこじつけるくらいなら,それらを求めず、もっと純粋に岩場を愛してくれる人に開拓は譲るべきじゃないでしょうか?
それかその岩場を公開しなければいいのではないでしょうか?そいうった岩場は全国に沢山あると思います.
そうしてじっくり自分のやりたい事をエリアの中で成熟させて,その後にエリアを公開するというのはとても合理的なやり方だと思います.
最近「ローカルルールに従いましょう」というのはかなり認知されてきたことに思います.
ではその「ローカルルール」は誰が,いつ,どうやって評価するのか?
ローカルと部外者は本当に「ローカル」vs「客」の構図であるべきか?
そういうことは基本的にあまり議論されてこなかった事だと思います.
今回はその辺を考えていただきたくてこの文章を書きました.
何度も強調しますが,僕は特定の人や団体を批判するつもりはありませんし,ローカルのルールには極力従うつもりです.
僕は既存課題に対して今はあまり興味が無いので,禁止しているエリアにあえて行こうとは思いませんし.
以上,僕に直接意見を送るでも,仲間内で話し合うでもいいので是非多くのクライマーにこのことを考えていただければと思います.
本当はこのテーマ以外にも書きたい事は沢山あるのですが,今回はかなり長くなってしまったのでこの辺にしようと思います.
頂いたコメントやメールなどは返すのに時間がかかると思いますのでよろしくお願いします.
中々書くタイミングや人に話す機会が無かったので渋っていたのですが,少し話題に上がったので研究が忙しくなる前にと思って今回ここに書く次第です.
最初に分かってほしいのはこれから書く内容は僕の個人的な考え方であり、違う意見を完全に否定したいわけではありません.ただ自分の立場考え方を一度明確に示しておく必要があると思ったのです.
「公開プロジェクト」という言葉があります.
つまりは誰しもがトライしていい未完成の課題と言うわけですね.しばしば初登争いがあったりするわけです.
では「公開」が付かない「プロジェクト」.これは一体何なのか?
つまり公開されていないプロジェクトがあるというわけです.
すでに「公開」されている一部のエリアには「非公開プロジェクト」なんてのもあります.
つまり,開拓した人,メインでトライしている人が、それ以外の人がトライするのを禁止しているという状態です.
他人のトライを禁止する理由として主に考えられるのは課題の整備不足でしょうか.
特にリードのルートなどでは支点の整備が不十分であったり浮石が多かったりして,公開されていないなんてケースは多々あると思います.
そこで事故が起こればエリア閉鎖,なんて事にもなりかねないですし.
ではボルダーではどうか.
ルートのケースに比べこれらの理由は圧倒的に少なくなるでしょう.一つの課題にたいして整備にかかる時間は圧倒的に少ないはずですし,エリアが公開されている時点で整備は一通り終わっているというのが後からエリアに来るクライマーの一般的な認識だと思います.(その認識事態にも問題は多少ありますが・・・)
ではなぜトライを禁止するのか,「他人に初登を取られたくないから」というのがむしろ一般的な理由じゃないでしょうか?
精神的な話をしましょう.確かに自分が頑張って掃除して,エリアを整備し,トライを重ねてきた課題を後から来たクライマーに登られてしまったら確かに悔しいです.自分が初登したいと願う事は当然だと思います.
これは一つの課題に限らエリア全体にも言える事です.宮崎の比叡などは開拓メンバー以外がプロジェクトないし掃除されていない課題を触る事をエリア全体で禁止しています.
理由は「部外者に初登されたくない」からだそうです.これは開拓されている方から直接聞きました.
数年前DKさんは比叡の大谷エリアで一本の課題を初登しました.
その時僕も一緒にトライしていましたが,DKさんはグランドアップで,ブラシ片手に脆いフレークを剥ぎながらそのハイボールを登りました.
翌日僕とDKさんは開拓者の方にこっぴどく叱られました.残念ながら不注意だった僕らは岩場の使用ルールに「トポに無い課題をトライしてはいけない」と明記されていた事に気付いていませんでした.
危険を冒した事やトライしていた課題を取った(今回はそういうケースではありませんでしたが)こともそうですがそもそもルールを守れなかったのはまずかったと思っています.
その時は注意を受けただけでしたが,その後「出禁になった」などという噂まで出ていたので,まぁそういう事なのかも知れません.
ローカルへの配慮も欠けていたと思います.これは大いに反省するところです.
ただ,批判覚悟で言いますが,僕は正直その考え方には納得していません.
一体何の権限で岩場を私物化しているのかと,正直なところ思っています.
あの一件以来行く岩場のルールには従っていますし,トライしていい課題なのかも逐一確認をとっています.
しかしそれは無駄に波風立てたくないからであって僕自身がその考えに同意し従っているわけではありません.
岩場の存続にかかわる理由じゃない限り、権限なんて無いじゃないですか.
そりゃ強いクライマーに横取りされたら悔しいし腹が立ちます.でもクライミングってそういうものだと思いますよ.
素晴らしいライン,難しいラインを登れるようになりたいから僕らは頑張ってトレーニングして強くなってきたんですから.中にはそのために生き方まで変えた人もいると思います.
スタートラインはみんな同じで,頑張り次第で差が付いてゆくというのは根本的にフェアな事だと思っています.
ましてや,わざわざ公開した岩場でそれを禁止する方がむしろフェアじゃないと思うんです.
これは特に「非公開プロジェクト」に対する考え方ですが,動機が同じ「他人に登られたくない」であるならばエリア全体のルールにも言える事だと思っています.
だってそんなの努力関係なく「ルールきめたもん勝ち」じゃないですか.そんな事するくらいならエリアを公開しなければいいと思うんです.
他人の課題を登らないというのはいわゆる暗黙の了解であってマナーの一種だと思っています.
僕らはルールを破ったのだしマナー違反をした訳なので,悪いのは全面的に僕らだと思っています.
自分のやったことにを正当化する目的でこの文章を書いた訳ではないということは解って頂きたいところです.
しかしマナーは盲信するものではなく,実行すべき全ての人がその意図を理解している必要があるとおもうのです.
流石に僕も、人が頑張ってトライしている課題を横取りしてやろうとは思いませんし、もしやるのであればちゃんと了解はとるつもりです.
しかし,これはただの気遣いであって,開拓者サイドが全体に対して強制するものではないと考えています.
僕は遠山川を公開するのは正直気が進みませんでした.
自分たちが頑張って開拓してきたこの岩場を,世間に出すというのがどういう事なのかわからなかったのです.
父は地元の方々の元へ何度も挨拶に行っていましたし,僕も当時の自分としてはかなり頑張ってトポをまとめました.
そうして公開してみたらチョーク跡は凄いわ最終的に最大のプロジェクトは小山田さんに登られてしまうわで,傍から見れば散々かもしれません.
それでも大ザルやWADEと話し合ってエリアを公開することにしました.
それは世のため人のためではなく,純粋に遠山川へ来て登ってほしいという僕らの希望でした.
開拓者というのは基本的に弱い立場だとおもいます.
頑張りのわりに見返りと呼べるものはとても少なく.最終的には自分のエリアを「荒らされる」ような結果になりかねないのですから.最近は多くのエリアにおいてチッピングなどの問題も報告されていてより一層その傾向が顕著になっているでしょう.
ただし,開拓において「見返り」や「権限」をこじつけるくらいなら,それらを求めず、もっと純粋に岩場を愛してくれる人に開拓は譲るべきじゃないでしょうか?
それかその岩場を公開しなければいいのではないでしょうか?そいうった岩場は全国に沢山あると思います.
そうしてじっくり自分のやりたい事をエリアの中で成熟させて,その後にエリアを公開するというのはとても合理的なやり方だと思います.
最近「ローカルルールに従いましょう」というのはかなり認知されてきたことに思います.
ではその「ローカルルール」は誰が,いつ,どうやって評価するのか?
ローカルと部外者は本当に「ローカル」vs「客」の構図であるべきか?
そういうことは基本的にあまり議論されてこなかった事だと思います.
今回はその辺を考えていただきたくてこの文章を書きました.
何度も強調しますが,僕は特定の人や団体を批判するつもりはありませんし,ローカルのルールには極力従うつもりです.
僕は既存課題に対して今はあまり興味が無いので,禁止しているエリアにあえて行こうとは思いませんし.
以上,僕に直接意見を送るでも,仲間内で話し合うでもいいので是非多くのクライマーにこのことを考えていただければと思います.
本当はこのテーマ以外にも書きたい事は沢山あるのですが,今回はかなり長くなってしまったのでこの辺にしようと思います.
頂いたコメントやメールなどは返すのに時間がかかると思いますのでよろしくお願いします.
by sarutheomon
| 2016-04-14 18:31
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